燃え燃えキュン

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サイコメ 一巻の感想

 タイトルの通りサイコなコメディ作品……でいいのか? これは。

 舞台は「全員殺人を犯したことがある」経歴を持つ生徒たちで構成された学校。

 そこは生徒たちが学校生活を通して更生し、社会に戻るための学校だったのである。

 主人公は喧嘩が強い男子高校生。

 ある日主人公は呼び出しを喰らってリンチをかけられたのだった。

 が、主人公は見事返り討ちにし、無事帰宅。

 しかし主人公が返り討ちにした連中は何故か惨殺されており、しかもその主人公が犯人扱いされ逮捕されてしまう。覚えのない罪を着せられた主人公は、殺人を犯した経歴を持つ生徒たちが集められたプルガトリウム学院に送られることになってしまった。

 

 ……とまぁ設定自体はそこそこ面白そうなんだけど、主人公が学校に送られてから終盤に差し掛かるまでが凄まじくつまらなかった。

 地の文は悪くないんだけど、会話文が凄まじく脳みそをとろけさせてくるのがやばい。

 幼稚園児が喋ってんの? って感じの口調のキャラがいて、悪寒に襲われまくる。

 メインヒロインはおっぱいおっぱい連呼するし、ここまで読んでいる時点では読者の偏差値を下げてくる系統のクソ寒いコメディか……と読む気を完全に削いでくる。

 事実自分はあまりに寒い内容に、読む手が五回ほど止まっている。

 うわああああこれ以上は無理これ以上読み進められないいたたたたたたた、って感じだった。

 読み始めてから読了するまでに二週間近くかかった。

 しかししかし、終盤に近付くにつれてなかなか面白くなってくる。

 サブヒロインがただの殺人を犯した生徒、ではなく暗殺者? なるほどだから六人もぶっ殺してるのね……と思いきやまさかの殺人処女。

 自分と同じ境遇であることを知った主人公は自分の秘密(実は自分も人を殺したことなどないこと)を打ち明けるが、しかしそこで明らかになる驚愕の事実。

 なんとこの学院は生徒たちを更生するのではなく、生徒たちを暗殺者に育てるための機関だったのだ。そして教師たちは一流の殺し屋たちらしい。

 なるほどねー。頭のネジ全部外れてる教師だわとは思っていたけど、殺し屋だってんなら理解できなくもない。

 そしてついに主人公はガスマスクを外した素顔のヒロインとご対面する。

 その時自分は、おいおいさっきのサブヒロインの方がこれ掘り下げてんじゃね? メインヒロイン(笑)にならない? 大丈夫? と他人事ながら心配していたのは否定しない。

 しかし読んでみれば、なるほど確かにメインヒロインっぽさは出ていると感じた。

 メインヒロインは殺し屋として人工的に生み出された人間だったのだ。

 普段ガスマスクをしているのは、生まれ持った殺戮衝動を抑えるための物らしい。

 すべての感情が殺すに変換されてしまうヒロインは、気に入った主人公のことを殺すべく襲い掛かる。

 主人公も対抗するが、人間離れしたヒロインに圧倒され、殺される寸前まで追い詰められる。

 死を覚悟した時、妹の名前を呟いた主人公。

 そのことにヒロインは不満を覚え、殺意を失ってしまう。

 自分(ヒロイン)がこんなにも主人公のことを想っているのに、主人公は自分のことを想ってくれない。自分は彼の一番じゃない。

 死ぬ寸前まで追い詰められているのに、主人公の頭の中は自分じゃなくて他の女(妹)のことを考えている。

 まぁつまり、自分が相手のことが好きなのだから相手も自分を好きじゃないといけない、そうじゃないとおかしい――というクレイジーサイコヒロインの発想。

 主人公に対しての殺戮衝動を失ってしまったヒロインは、主人公が自分に惚れれば、つまり主人公がヒロインのことを好きになれば、その時こそ本当の殺意を抱けるはずだ。ということで、主に色仕掛けで自分のことを好きになるようにすることを決意する。

 一段落がつき、主人公が担任を問い詰める。

 ここは本当に殺し屋を育てるための場所なのかと。

 教師は肯定する。しかし、それほどまでに主人公が裏社会ではなく表社会に戻りたいのならば、この学院での三年間を殺さず、そして殺されずに過ごし卒業してみろ。もしそれができたのならば、表社会に帰してやる……と。

 主人公が冤罪でここに連れてこられてきているのは学院側も承知の上どころか、実は学院側の人間が、主人公の驚異的な身体能力に目を付け、暗殺者として育てるために無理矢理この学院に来させたのだという。

 主人公は元の居場所に戻るために、ここでの学院生活から生き延びることを決意したのだった。

 

 ……とまぁこんな感じの話。

 設定としてはシリアスのはずなんだけど、やってることはコメディで、ちょっとそこらへんがちぐはぐかなーって印象はあった。

 終わりよければすべてよしとは言ったものだ。

 中盤まで読んだ時は、これはゾンビですか? と同じく0点の評価は間違いないと思っていたのだけど、最後まで読んでみればあら不思議。4点くらいの評価はしてもいい作品になっていた。

 イラストも評価するのならば、まぁちょっと残念かなって印象。

 ヒロインたち女の子は上手いとは思うけど、線の細い絵しか描けないのか、男が全然男らしくなくて結構萎えた。

 主人公がガンを利かせて周囲を睨みつけるっていうシーンに挿絵があるんだけど、思わず苦笑してしまうレベルだった……。なんていうのかな。小学生が頑張ってガン飛ばしてます感っていうの? 見ていて恥ずかしい感が物凄かった。

 あとおっさんも描けてないなぁって。

 二巻でおっさんの教師が出てくるんだけど、なにあれただのゾンビでしょあれ。

 ちゃんと男をカッコよくっていうか男らしく描けるイラストレーターがいいなぁって思いました。

 女の子が描けるだけじゃ駄目なのよね……。

 キャラとかステレオタイプ(一部のクレイジーサイコな方々を除けば)だし、舞台が殺人者学校ってだけで普通のラブコメ感が漂ってるけど、まぁ「ラノベ」が読みたいのならおすすめできるよって作品。

 斬新な物語が読みたいって人にはあまりおすすめできない。良くも悪くも普通のラノベだから。

 でもモヒカンとボブはいい感じでキャラが立ってるので、もっとこういう特徴的なキャラが活躍するのなら期待できるかもしれない。

 という訳で4点。