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燃え燃えキュン

小説読み書きレビューしたりゲームの考察についてのブログ

心空管レトロアクタ 1巻読了

 ちょっと前の富士見ファンタジアの受賞作ですね。

 全然興味は無かったんだけど10円で売っていたので購入。

 うーん、何て言えばいいのかなぁ。悪くは無いんだけど、あまりにもあっさりしすぎている印象。

 邪禍という怪物がいる世界で、心空子という文明が発達した世界観。

 心空管ってのは日常生活に役立つものだったり、邪禍ってのと戦う武器としても使える、まぁこの世界においての科学技術。

 で、主人公が才能を見出されて邪禍と戦う世界に入っていく訳なんだけれども……。

 内容は悪くないんだけども、文章力の低さと、キャラがテンプレチックなせいで、いまいち内容に乗り込めないのが非常に残念。

 同じ料理でも、プロが作ったものと素人が作ったものの違いとでもいうか……。

 主人公とヒロインが間接的に昔から繋がっていたとか、ヒロインの魅力とか、何故主人公が武器を使いこなすことができるようになったのかのこじつけとかは悪くないんだけど、やはり料理の仕方が良くなかった。

 んで、ヒロインも魅力を掘り下げる描写があるんだけども、それが遅い! 遅すぎる! そのせいで終盤になるまでヒロインがただのウザいキャラにしかなってない! 残念すぎるよ!

 キャラの魅力を起承転結の結で描写してどうすんだよ! 承のとこまでには描写しとかんといかんでしょ!

 あとはなー。設定がちょっと面倒なのも惜しかった。

 ちゃんと読めば作者の中ではしっかり設定が出来上がってる感じが分かるんだけど、初見で理解しろってのは面倒だし、それを理解するまで読み返してくれる読者がどれだけいるのか……という感じ。まぁある程度仕方のない部分ではあると思う。別に設定を理解していないと物語についていけないもんではないし。

 それでも、心空子を利用して本人しか光らせることのできない死人のペンダントが何故か光っている→心空子は肝臓から生成される→すでに死んだ主人公の恩師の肝臓を移植したヒロインがペンダントを所持していたから光っていた。

 っていう伏線は良かった。この作品の一番良かったポイント。

 あとは、世界観の説明に従事してしまったのが残念。でもオリジナリティを説明するには仕方のないことだとも思うし、難しい。

 他にも戦闘シーンがあるんだけど、全然盛り上がらなかったのも悲しい。いや、ちゃんと盛り上がる場面ではあるんだけど、作者の思いが文章を通して伝わってこなかった感じ。戦闘も、戦闘描写というよりは戦闘場面を説明的に文章にしているだけだし、熱量を感じないというか戦闘してる感が皆無だった。

 あとはなぁ、日常的な部分においても、なんつーかこう、特に会話にセンスを感じなくて面白みが無かった。普通の会話なんだよね。ラノベだったら例え説明的な部分でも面白おかしく会話劇化してほしいというか、面白さを感じたいんだけども。

 あとは、なんだろうなー。とにかく面白みに欠けてたんだよね。何が駄目だったんだろう。

 やっぱりしつこさが全く無かったところなのかな。サラサラすぎてお茶漬け感がすごいというか。手軽に読みたいなら、それこそネット小説みたいなもんで充分だし。

 本に求めてるのは、やっぱ重厚感というか読み応えがあるもんだよね。自分はそう。

 やっぱり100点を取れるポテンシャルを持ちつつも30点しか取れなかった、っていう評価が自分の中ではしっくり来る感じ。

 あとはあれだな、邪禍と心空子以外でオリジナリティが見えてこなかったのが残念すぎた。邪禍と心空子の、心空子を使えば使うほど邪禍を呼び寄せてしまう。しかしそのことは一般人は知らない。しかし主人公の両親が発明した機械なら邪禍を呼び寄せず、ただ心空子を使うことができる。

 っていう設定は良かったんだけどなぁ。

 主人公も良く見れば結構魅力的な奴なんだけど、やはり残念ながら描写不足のせいで「絶望的な状況にも屈せずなんとか解決してやろう」という気概が十分に伝わってこなくて、ただの能天気で楽観的な魅力を感じにくい奴にやってしまっている。あー勿体ない。

 ヒロインも終盤でやっと魅力は出てきたんだけど、それでもまだ「普通」なんだよなぁ。なんていうか、常識を打ち破るギャップが足りないっつーかさ。役割を演じるだけに終始してしまっているというか。

 例えばだけど、空腹だけど金が無くて泥棒するしかない状況に陥ってしまっているとする。で、泥棒に成功したとする。そこでその泥棒を働いたキャラは「こんなに簡単に行くとはな、今まで泥棒してこなかったの自分が馬鹿みたいだぜ」となるのか「ああ、自分はなんて悪いことをしてしまったんだ」と良心の呵責に苛むのか、色々なリアクションがある訳だよ。で、この作品のヒロインは「偉い人に脅されたから嫌だけど邪禍と戦うことを選ぶ」訳だけど、何故それを選んだのか、という理由・動機が弱すぎるんだよね。浅い。深みが無い。ただ「脅されたんだから仕方ないじゃん」にしか見えない。一応罪悪感を覚えている訳だけどさぁ、薄っぺらいんだよね。これだと、そこらへんの一般人をヒロインのポジションにぽいっと抛り込んだらそれでも成立するじゃんこの物語、って感じ。このヒロインならでは感が足りなさすぎる。

 上の例だと、「こんなに簡単に行くとはな、今まで泥棒してこなかったの自分が馬鹿みたいだぜ」や「ああ、自分はなんて悪いことをしてしまったんだ」となるには、そうなる(そう思う)に至る経緯がある訳だ。

 つまり、踏込が足りないんだよな。

 優しい性格、残虐な性格。それはいい。問題は、何故そのキャラが優しい性格になったのか、残虐な性格になったのかの理由が無いことだよね。

 この作品のキャラは、みんな表面的でしかないんだよね。そこが惜しい。もっと踏み込めよ。

 キャラの弱さ。あまりにもあっさりしてしまっている密度の低い文章。

 これらを改善できていれば良作になり得たんじゃないかなぁ。つーかこれをやって初めて凡作になれるレベルだと思うけど。

 

 3点。