燃え燃えキュン

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作品の分析の仕方

 筆力のレベルアップというか創作のレベルを上げるというか、物語の構成などを学ぶには、既存の作品の分析というのは大事なことだろう。

 では、どのようにして分析すればいいのだろうか。

 まずは、普通に作品を読んでしまえばいい。

 一読者として、分析のことなんて考えずに、その物語を楽しんで読めばいい。

 読み終えたら、その作品に対して何かしらの感想を抱くはずだ。

 基本的には感想は三つに分かれると思う。

 面白かった、つまらなかった、面白くもつまらなくともなかった(何も感じなかった)この三つだ。

 ここからが分析の本番だ。

 面白かったら、何が面白かったのだろう? と素直に考える。

 勿論物語というものは、最初から最後まで一貫して読んで、初めてその面白さが理解できる、ということもある。しかし面白いと感じたからには、どこか部分部分に面白さが隠れているはずだ。

 今度は、自分はどこを面白いと感じたのかに注意しながら読めば、その作品の面白いポイントが分かるはずである。

 面白さが分かればしめたものだ。ここがこうだから面白い(面白さの構造)、というのを理解すれば、自分が創作をする際に活かすことができる。

 しかしながら、世の中には面白い作品というものはなかなかないというのが現状だ。

 世間で絶賛されている作品だとしても、自分の感性には合わないものもある。というか、そういう場合の方が多い。

 逆に、マイナーではあるが、自分はとても面白いと感じる場合もある。

 自分の好みを大切にしつつ、ベストセラーは勿論、マイナーな作品というか、より多くの作品に触れることが重要だろう。

 

 面白い作品よりもつまらない作品の方が多い。ではどうするか?

 次は、つまらない作品の分析の方法である。

 作品を読む。つまんねー! となる。

 一般人であれば「つまんねー」と一言呟き、次の作品に移ればいいだけだが、作品を分析して面白さの構造を理解したいあなたには、そうもいかない。

 つまらない作品を読んだあなたは、何故その作品がつまらないのか? と分析する必要がある。

 つまらない作品の分析をするには、基本的には面白い作品と比較し、その差異を確かめればいいという話になる。

 キャラクターはどうか、ストーリーはどうか、設定はどうか、の三つが基本的な見るべきポイントだ。

 この三つが大事と簡単に言ってしまったが、その三つをどう見ればいいのかが分からない人もいるだろう。

 多くの作品に触れてきた人であれば深く考えずとも、ここが良いここが駄目というのが分かるだろうが、創作の素人であると、どこをどう見ればいいのか分からないのではないかと思う。

 しかし見るべきポイントというのは結構膨大で、一つずつ挙げればきりがなかったりする。

 一例をあげるのであれば、キャラクターであれば、「目的が最初からきちんと定まっているか」というのは重要なポイントである。

 作品を読んで「何がしたかったのかよく分からない作品だった」という感想を持ったのであれば、大体この点に問題がある。

 主人公が何のために存在しているのか分からない、主人公が何をしたいのか分からない。

 主人公が何をしたいのか分からないということは、その作品がどういう作品なのかも分からないということである。どういう作品であるか分からないものに、面白く思えるはずもない。

 「目的が最初からきちんと定まっているか」という視点で見た場合、重要なのは『最初から』の部分である。

 起承転結でいえば、起の部分である。この時点で主人公の目的が明確でないと、読者が離れる可能性が高い。目的が最初からきちんと定まっていないのに読者が離れないとすれば、キャラが魅力的だったりする場合だ。だが、基本的には『起』の部分で主人公の目的が明確になっていた方が絶対にいい。

 ここで悪い例を一つ上げる。

 この間まで連載をしていた、ヤングマガジンのバカビリーバーという作品だ。

 個人的には作者の作品のファンということもあって最後まで追いかけた作品ではあるのだが、残念ながら打ち切りとなった。

 打ち切りの理由は、内部の人間ではない自分からははっきりとしたことは勿論言えないが、上で挙げた「主人公の目的が最初からきちんと定まっていなかった」点だと思っている。

 勿論、作者の中ではちゃんと目的が決まってはいただろう。だが、それが読者の視点からはなかなか見えてこなかったのである。

 この作品は「バカで腕力のある主人公が漫才師を目指しているが、ひょんなことから格闘家たちと出会い、その強さを認められていき、格闘家としての人生を歩んでいくことになる」作品だと言える。

 問題は「この主人公は漫才師を目指していくのか? それとも格闘家を目指していくのか?」がなかなか見えてこなかった点であろう。

 これが本当にやきもきした。方向性が見えてこなかった。

 バトル要素のある漫才漫画なのか、格闘漫画なのか。すなわち漫画のジャンルすら長い間判明しなかったのである。そして判明するころには、元からファンでもない読者は読んでいない……。

 極端な言い方をすれば、ラブコメ漫画なのか、ガチファンタジー漫画なのかも判明しない作品を読み続けるか? ということだ。

 マガジンで人気のあった漫画を連載していた作者ではあるから、面白い作品を描けない漫画家ではないのだ。だが、序盤で失敗してしまっていたため、あえなく打ち切りという結果になったと自分は見ている。

 このように、キャラクターの中の一つの「主人公の目的が最初からきちんと定まっているか」を説明するだけでこの程度の文章量が必要となる。

 全部説明すると何十万字掛かるが分からない。しかしながら、創作を目指す者であれば数々の作品を読んできていることだと思う。その中で、意識的か無意識的に関わらず自然と「面白さ」というものを理解していると思うので、自分の中にあるそれを言語化し、自分なりの「面白い要素リスト」を作ってみるといいと思う。

 大事なのか、自分の頭で「何故面白いのか」「何故つまらないのか」を考えることだろう。

 

 最後に「面白くもつまらなくもない、感想を持てない」作品についての分析だ。

 これがなかなか難しい。

 感性として自分に合わない、という作品も存在する。そういう作品は、読まなかったものとして、すっぱり切り捨てることも大切だろう。

 だが、基本的には、どうすれば(自分好みに)面白くなるのか、を考えることだろう。

 キャラの魅力が足りないからキャラを掘り下げるエピソードを入れた方がいい、山も谷もなく平坦なのが問題だからここで事件を起こした方がいい、などなど。

 結局何かを参考にするばかりでは、あなたの個性、独自性、オリジナリティというものが薄れてしまう可能性もある。自分の頭で考えることが、やはり一番大事かもしれない。

 結局分析とは、「何故」を追求することにある。その基本となる部分が、キャラ、ストーリー、設定である、ということだけを知っておき、あとは自己流で分析をするのが良いと思う。

 そうして分析した結果を自分の血肉とし、自分の作品に活かしていくことが、構成のレベルアップに繋がる。

 作品を読んだらそこで終わるのではなく、抱いた感想に対して「何故」を追求していくことが分析の第一歩だと考える。