僕が七不思議になったわけ
面白い。
割とある感じの序盤から、爽快感のある短編的な話に持っていきつつ、最後にどんでん返しを持ってくる構成。
表紙を開いてすぐの著者紹介に緻密な構成力の光る作風が持ち味、と書いてあるが、その表現に違いない物語が展開されている。
主人公が小心者すぎてなんだかなぁと思う人もいるかもしれないが、許容すべきである。彼はこれでいいのだ。大人は馬鹿にするかもしれないが、これは思春期であれば誰が持っていてもおかしくない不安とか焦りとか、そういうものだ。
季節ごとの章仕立てとなっており、まぁそこに色々と仕組みがある訳だ。初見ではなかなか気づけないだろう。読み終えた後にまたすぐ読み返したくなる、という煽り文も、全くもってその通りである。
終盤での展開がやや唐突すぎるというか、どんでん返しのために用意されたイベントのように感じられてしまったのが残念ではあるが、しかし自分にはどうすれば自然にこの展開に持っていけたのかが分からないので、批判することはできない。
いやしかし、この小説を評価するにはどうすればいいのかがよく分からない。
終盤のどんでん返しのみに魅力があるのかと言われれば、そうではないだろう。
一見簡単のように見える、七不思議を活かした事件の転がし方は、しかしその実技量が必要であり、デビューしたての新人とは思えないものがある。
地味ながらもしっかりと伏線が仕込まれており、大きなカタルシスがある訳ではないが、軽快な読み心地を与えてくれる。
上手く表現することができないが、この小説は、自分で用意した設定を見事に料理している点にあるのではないかとも思う。こういうことが、構成が光るということなのだなぁといたく感心させられた。
一部ではこの小説の文章力が無いという意見もあるようだが、頭大丈夫か? としか言いようがない。粗探しにもほどがあるだろう。自分はこの小説の文章が稚拙、幼稚、未熟などとは一切感じなかった。綺麗で簡潔にまとめられた、良い文章だと感じた。
綺麗でまとまった小説。どんでん返しで楽しめる小説。それらはあれど、綺麗にまとまりつつも最後には切ないどんでん返しが待っている小説はなかなか無い。だが、この小説にはそれがある。
これからの小心者の主人公に期待したい。