ミミズクと夜の王 レビュー
【ミミズクと夜の王レビュー】
ミミズクと名乗る奴隷の少女が、夜の王という魔物の王に食べられるために、魔物の森へとやってきたところから始まる。
正直序盤は、ミミズクの会話というか喋り方が独特すぎて「なんじゃこりゃ」って感じだった。
でも次章の、ある国の王と騎士の会話はかなりまともで、作者に文章力が無い訳ではないのだなと思い読み進めていった。
ストーリーの構成としては、捕われの女の子を助けるために騎士が奮闘する、という一見オーソドックスなもの。
ミミズクは魔王に食べられるために、この森まで来たという。
何故かと言うと、奴隷としての生活にほとほと嫌気がさしてしまったからだ。
だがそんな彼女を夜の王は拒絶する。
それでも魔王に付きまとっていたミミズクは持ち前の無邪気さのおかげか、魔王にそっけない態度を取られることはあっても、拒絶されることはなかった。
ある日、魔物の森に迷い込んだ男とミミズクが出合う。
男に出口を教えてあげるミミズク。そんな彼女に男は、君も逃げないのかと問うが、ミミズクは森の中に消えてしまった。
無事森を出た男は、魔王に少女が捕らわれていると報告し、国は少女奪還のため魔王を討伐しようと動き出す。
森にやってきた騎士一行。魔王は抵抗らしい抵抗もせず、騎士に捕まってしまう。
しかし、この物語はミミズクが騎士に助けられてからが本格的に物語が始まっていく。
ミミズクは騎士に助けられた時、魔王によって森にいた頃や奴隷だった頃の記憶を封じられていた。
助けられたミミズクは、魔王に捕われていた悲劇の少女として丁重に扱われる。
ミミズクはそこで人の優しさに触れ、人間らしさを取り戻していく。
そんな彼女は国の魔術師の力を借りて記憶を取り戻すこととなる。
記憶を取り戻したミミズク。彼女は自分の記憶を魔王に封じられていたことを理解し、泣き叫ぶ。
そして遂にやってきた魔王処刑の日。
ミミズクは友達である王の息子に手を貸してもらい、貼り付けにされた処刑されるのを待つばかりの魔王の前へと踊り出る。
そして彼女は、魔王を助けることを選択する。
魔王がどんな人物だったのかを知っていた騎士は、最終的に王の命令に背いてミミズクの幸せを願い、王子の動かない四肢を治すために吸い取っていた魔王の魔力を溜めた水晶を破壊した。
復活する魔王。
聡明な魔王は王子の四肢を魔法で治し、森に帰るために飛び立とうとする。
ミミズクはやはり、町での人間としての生活よりも魔王といることを選んだ。
仕方なし、といった様子で魔王はミミズクを抱き、森へと帰って行った。
ハッピーエンド。
という感じの話。
王道だし、探せばどこかにそんなファンタジーがありそうだと思わせる内容だったが、面白いものは面白い。
ミミズクの過去だけではなく、騎士の人間としての魅力。騎士の妻の生い立ちや魅力。国のためを思って冷たく見えていた王の、父親としての優しさや国民たちの人の良さ。ミミズクを導いてくれた魔物クロの優しさなど、様々な人物の魅力が詰まっている小説。
ミミズクが今まで受けていた仕打ちとは真逆の世界が、より一層物語内に出てくる人の優しさを際立たせているのではないだろうか。
一言で言うのなら、綺麗なお話。
読み終わった後に、彼ら彼女らはこれからどうなるのだろうと心地の良い想像をさせてくれた。
一つ難点を上げるとすれば、奴隷の少女に過ぎないミミズクが何故こんな状況になったんだ? という点がわずかに疑問か。
それと主人公であるはずのミミズクがこの物語で一番魅力があった訳ではないので-1。
9点の評価をしたい作品。
ライトノベルかというと違う作品だとは思うので萌えやそういったものはないが、小説として完成された作品だと思う。
ラノベっぽくないラノベが読みたい方にはオススメできる小説。