されど罪人は竜と踊る レビュー
【されど罪人は竜と踊る一巻レビュー】
読んだのはスニーカー文庫の方。
戦闘描写が良いと聞いていたので、手を出してみた。
物語は主人公ガユスと、その相棒である超絶美男子ギギナの動きがメインで進む。
文章はガユスの一人称。
日常パートはガユスの独白が面白く、戦闘シーンは一人称でありながらも三人称気味で上手いなーと感じた。
シリアスなストーリーのくせに、ガユスとギギナの会話が面白くて仕方ない。
ガユスはまだまともなんだけれど、ギギナが訳分からな過ぎて、それに振り回されるガユスが本当に面白い。
この二人の関係は、飲んだくれの夫(ギギナ)と泣き寝入りする妻(ガユス)という図式が成り立っている。
軽妙な掛け合いとはまた違う、異質な面白さを兼ね添えている二人。
この世界には咒式という、まぁ一言で言ってしまえば魔法のようなものがあり、ガユスとギギナはそれを駆使して異貌のものや竜と戦う攻性咒式師として活動している。
戦闘シーンは読みごたえがあって、非常に面白い。
咒式によって身体強化を行う接近戦タイプのギギナと、遠距離魔法のような咒式で戦うガユスの、それぞれ違う戦闘法がくどいほどに書かれていて、読み進めるのがもどかしいんだけど、でも楽しい。スリルがある。一字一字追っていくのが楽しみ。
これをくどい、面倒くさいと感じるか、読み応えがある、描写が良いと感じるかは人によって評価に差が出るかなとは思う。自分は後者。
そして咒式関連の単語が中二心をくすぐりすぎる。
武器名の、「断罪者ヨルガ」「贖罪者マグナス」なんて中二過ぎて恥ずかしいくらい。でもカッコいいんだよなぁ。
こういうのを見ると、痛いと中二は別物だってしみじみと思う。
二人は仕事で枢機卿の護衛をすることになるんだけど、この枢機卿が曲者過ぎるほどに曲者。
ガユスとギギナは、枢機卿の手の平の上で転がされていたっていう話。
でもガユスは枢機卿の考えに気付いていたんだけど、あえて気付かぬふりをしていて、そしてギギナは普段ガユスのことなんて何とも思っていないように見えているのに、ガユスのために枢機卿に切りかかった時は本当に「相棒」なんだなぁと感じさせられる。
この物語は人が簡単に死んだりするし、主人公たちがハッピーになるわけではないけれど、それでももがいて生きているガユスに……なんていうんだろう、共感とかではないんだけど、応援というかなんつーか……基本的に「良い奴」なので見守りたくなる感じ? とでもいうのか。
ストーリーはラノベにしては鬱気味な内容なんだけれど、独特な奴らが多いので暗さをあまり感じさせない。
壮大なストーリーというよりは、主人公ガユスが苦難の道を歩き、突き落とされ、それでも這い上がってくる姿を楽しむ小説な気がする。
個人的にはこの作品の文章を評価したい。次点で人物の魅力について。人によってはここは逆転するかな。
久しぶりに面白いとライトノベルに出会えたと思った。
評価は10点満点。
フルメタと同じく、この作品にも萌え要素といったものはないが、ガユスの恋人のジヴがめっちゃかわいいので萌えと呼べなくもないかもしれない。