下ネタという概念が存在しない退屈な世界の感想とか
意外と評価が難しい作品。
大雑把な流れとしては、
十数年前から不健全をされるもの(エロ本など)が取り除かれて、健全な世界を目指している、という世界観。
そのような世界の中で、主人公はエロテロリスト(街中でエロ本をばら撒いたりして正しい知識を広めようとするテロリスト)の父を持つ、つまり不健全な知識を持つ子供だった。
そんな主人公が通学途中にエロテロリストのヒロインと出会ってしまう。
痴漢の濡れ衣から逃れるためにヒロインの力を借りて逃走するのだが、そのことを弱みとして握られ、主人公にエロテロリストに加担するようヒロインに脅迫される。
主人公とヒロインは学校内でテロを繰り返し、生徒たちに正しい知識を広めようと奔走する。
終盤では、子供たちに貞操帯の装着を義務付けするというぶっ飛んだ法案を掲げる役員を相手に大立ち回りをし、署名活動を妨害し、学校の生徒たちを扇動してエロ本を奪還させようとする。
見事エロ本を手に入れ、法案についての選挙も台無しにすることに成功した二人。
二人はこれからもエロテロリストとして活動し続けるのだ。
みたいな内容。
内容は下ネタと馬鹿な事ばかりであり、正直個人的にはあまり面白くなかった。
が、見事だと思ったのは、無駄なキャラクターがいなかった点。
出てきた名前付きの登場人物を有効活用しきった点は上手いと思った。
キャラの特性を物語に上手く絡めて、しかも全員を活かしきったのはすごいのではないだろうか。受賞してからの改稿でこうなったのかもしれないが、キャラを完全に使い切るというのは容易ではないはず。
キャラの目的、行動原理もちゃんと描写されていて、変態的な内容に似合わぬ構成である。強いて言えば主人公サイドに比べて敵側の思想の中身が見えてこなく、上手く対立を活かせていないのが惜しいと感じたが、そこは許容範囲内だろう。
最低限の登場人物を用意し、見事に使い切った手腕は評価できる。文章も拙くない。
が、やはり際物の類である作品は間違いないので、物語としての面白さでいうと高くはない。
とはいうものの、努力友情勝利の方程式を上手く使っていて、設定はともかく内容自体は王道と呼べなくもない。
この作品はヒロインの小学生レベルの下ネタを楽しめるかどうかにかかっていると思う。つまり、上手いけれどそれが面白さに繋がっていない印象というのか。
しかし一気に最後まで読ませるくらいの勢いはあったし、決してつまらない訳ではなかった。まぁ勢いで押しすぎて引っかからないところが無かったわけではない。
5点。