燃え燃えキュン

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魔法少女育成計画 感想

 評判が良かったので読んでみた。

 一言で言ってしまえば魔法少女たちによるバトルロワイヤル。

 評価が難しい作品だと思う。

 決してつまらない訳じゃない。けれど、絶賛されるような作品でもない。絶賛される理由としては、ライトノベルというジャンルの中では異色作であることは確かだと思うから、そのせいではないだろうか。

 作風としては群雄割拠風で、十六人の魔法少女それぞれの視点で物語が進んでいく。が、一応主人公は存在している。ダブル主人公の体裁といえば、そうなのかな。

 ストーリーとしては、

 魔法少女育成計画というソーシャルゲームがある。それは極稀に本物の魔法少女を生み出すゲームだった。

 魔法少女を夢見ていた主人公は、ただの都市伝説だと思いつつも、なんとなくゲームを登録し、プレイしていた。

 しかしプレイを始めてから数日が経ったところ、本当に魔法少女になってしまう。喜ぶ主人公。魔法少女は一人につき一つ、オリジナルの魔法を使える。例えば主人公の魔法は「困っている人の心の声が聞こえる」というもの。

 魔法の国の妖精や先輩魔法少女から説明を受ける主人公。とりあえず魔法少女は、人々の手助けをする存在であるらしい。それこそが夢だったので、主人公は魔法少女として人々を助ける活動を嬉々として始めていった。

 しかしある日、主人公たちが活動拠点とするN市で魔法少女が増えすぎるという事態が起こってしまった。妖精は魔法少女たちに、十六人から八人まで減らすと告げる。

 その方法とは、魔法少女が人助けをすると貰えるキャンディの量を競うというものだった。週に一度チャットを開き、その場でキャンディの量が最下位の人を発表し、一人ずつ脱落していく。

 魔法少女をやめたくない少女たちは、キャンディ集めに奔走する。

 そして最初の週、ねむりんという魔法少女が最下位だったために脱落した。

 妖精に一人の魔法少女が尋ねる。魔法少女としての資格を剥奪されるとどうなるのかと。妖精は答えた。魔法少女の資格を奪われた者は、死ぬと。魔法少女たちのデスゲームが始まった。

 で、様々な展開が待ち受ける訳だけど、どうもあっさりとしすぎているし、軸がぶれていく印象を受ける。

 最初はキャンディを集めるというギミックを活かしたサスペンス風味ではあるんだけど、結局相手をぶっ殺した方が早いじゃんみたいな展開になってしまっている。ラストでは空気になりかけていたキャンディを使ったギミックで唸らせてくれるかと思いきや、ただバッサバッサと人が死んでいくだけ。拍子抜け。

 280ページというページ数で十六名のキャラというのは多すぎたというのがまずある。

 (主人公たちから)見えないところで魔法少女たちが戦っていて、チャットでの報告で他の魔法少女たちも動いているんだと知るだけでいいのに、わざわざ全員を動かしてしまっているのが悪いと思う。そりゃあ描写が足りなくなってあっさりせざるを得ないよ。

 ダブル主人公の二人(とその仲間)に焦点を絞って話を展開させられれば、もうちょっと面白くなったかもしれないのに。

 主人公の幼馴染の男の子が魔法少女になっていて主人公と再会するというキャッチーな設定があるのに、序盤にあっさりと幼馴染殺されるし。しかも「オレは主人公を守る。だから負けられない!」→次のページでは死んでました、っていうのが哀愁を誘いすぎる。せめてバトル描写があればマシだったものを。てかマジで何のために存在していたのか分からん。キャラの半分くらいがこういう感じで死ぬ。絶対にキャラの人数設定がミスだと思うんだよなぁ。何度も言うけど描写が薄すぎる。

 ラスボス的な魔法少女との戦いでは、今まで全く能力を効果的に使えていなかったキャラが、本来の用途とは全く違う使い方でラスボス倒しちゃうし。リアルに「はぁ?」って思った。

 このデスゲームも、ある魔法少女と妖精が黒幕だったんだけど、そのネタバレがラストの方まで引っ張った割にあまりにあっさりと明かされすぎ。お、おうとしか言いようがない。

 人が死ぬのに淡々とストーリーが進んでいくというのはシュールホラーのような空気を出していると言えなくもない。けど内容に対してあまりにテンポが軽すぎてストーリーに入り込めないというのが個人的な感想。各キャラクターもそこそこ魅力的ではあるんだけど、いかんせん描写が足りない。好感を持てなくはないんだけど、そこ止まり。好きまではいかない。

 半年は死ねないんだ! って言うキャラが死んでしまう悲しいシーンがあるんだけど、やはり描写が足りないせいで死んだところで「ああ、そう」としか思えない。なんか理由を取ってつけた感じがするのもマイナス。

 まぁ文章は読みやすいし、なかなか良い文章ではある。しかしその分戦闘シーンは迫力がなくて物足りない。熱を感じない文章っていうのかな。

 読みやすく一風変わった作品ではあるので、暇つぶし程度でなら購読してもいいんじゃないでしょうか。5点。